〔疲労回復する大切さ〕公務員ランナー川内優輝選手の速さは、マラソンレースで鍛える練習方法にあった?!

長距離選手の皆さんこんにちは。

今この記事を書いているのが冬の時期ということで、長距離種目に特化した練習方法をご紹介したいと思います。

ずいぶん前ですが、武井壮さんがあるラジオ番組で公務員ランナーである川内選手の強さの秘密を語っていました。

その武井壮さんが語っていた陸上トレーニングの話が、世の中の多くの陸上選手達が行っている「キツイ練習」に言及しているようでした。それがすごく感心させられる内容だったので備忘録として今回書かせてもらいます!

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川内選手はどんな選手?

2010年〜2011年にかけてマラソン選手として大きく記録を伸ばしてきた選手です。以前に市民ランナーが世界レベルにまで達したということで、メディアに多く取り上げられていましたね。

そんな彼の経歴を簡単にご紹介します。

川内選手の経歴・実績

陸上選手としては珍しい、歳を経るごとに記録を伸ばしてきたマラソン選手です。

どこのチームにも所属しておらず、練習を続けています。どこにも所属していないので練習メニューも自分で考え、実行してるスタイルをとっています。

学生時代は学習院大学で陸上を行い、意外にも突出した成績は一切残していません。学習院大学時代には学連選抜(箱根駅伝に出場できなかった大学の中から、速い選手を集めて1チーム作るという選抜)として箱根駅伝(6区)に2回出場していましたが、その他に目立った成績はありません。

なので、陸上選手の中では長い距離を走らせるとまあまあ速い選手として活躍できる選手でした。ただ、5000mや10000mなどのスピード系のトラック種目では無名な選手という感じでした。

ところが大学を卒業し、埼玉県の定時制高校の職員として勤務する側、市民ランナーとして練習を重ね、マラソンの記録を着実に伸ばしていきました。


川内選手の自己ベスト

種目 自己ベスト
1500m 3分50秒51
(2012年)
5000m 13分58秒62
(2012年)
10000m 29分02秒33
(2010年)
ハーフマラソン 1時間02分18秒 (2012年)
30km 1時間29分31秒 (2013年)
マラソン 2時間08分14秒 (2013年)
50km 2時間44分07秒 (2016年)

川内選手の実績

経歴
2010年 東京マラソン2位
2011年 世界陸上大邱大会出場
2013年 世界陸上モスクワ大会出場
2014年 アジア大会仁川銅メダル

その証拠として上の表にもある通り、世界陸上大邱大会、モスクワ大会と出場した経験があります。2014年に仁川で行われたアジア大会では2時間9分15秒のタイムで銅メダルを獲得したのです。

今年のロンドン世界陸上の代表候補として、注文されるべき選手だと思います。なので是非、長距離選手の皆さんは川内選手の練習スタイルを参考にしていくべきだと思うのです。

川内選手の練習のテーマ「オーバートレーニングは絶対しない」

普通のマラソン選手だと月間の走行距離が約1000kmと言うのが普通です。

一方で川内選手はというと月間500km程度の距離しか走りません。

川内選手の練習には大事なポイントがあります。それは翌日に疲労が溜まるほどのキツイ練習はしないというテーマです。多くの選手はポイント練習といって、スピードを上げたペースの速い練習を取り入れるのが普通です。マラソンという長い距離を走るために、速いスピードをレース中でも維持できるようにするためです。

川内選手の練習は週に5日間。ほぼジョギングだけ。もちろん長い時間ジョギングするわけですが、速いスピードを上げた練習はあまりしないというのが特徴です。

彼の練習の頻度についてですが、1日に1回の練習にとどめているそうです。

普通の選手だと2部練習といって、1日のうち午前中と午後に練習を分けるなどという方法をとります。多い選手だと3部練習をやる人もいるようです。きついですね。

また川内選手はどこのチームにも所属していないので、基本一人で練習しています。チームで走るのは、練習内でチームメイトと競争しなければならないので、精神的に疲れるからだそうです。ここに川内選手がどこのチームにも所属しない理由があるわけですね。

これで練習足りるの?

ここで疑問が。

マラソン選手にしては月間500kmという距離しか走らず、週に5日、1日1回しか練習しない。しかもその練習内容がジョギングばっかり。

じゃあこれで練習足りるの?なんで記録が伸びたのか?

その秘密は実戦で鍛えるという川内選手のテーマの中にありました。

マラソンの練習効果はマラソンを走った中でしか身につかない

ここまで川内選手の練習スタイルを確認してきましたね。普通の選手と比べて、練習量が圧倒的に少ない。そんな印象です。

しかし、川内選手の速さにはある秘訣があります。

それは、たしかに練習量は少ないけど、レースは他の選手よりもたくさん走っているからなめんなよというのが川内選手のマラソンの一番のテーマとなっています。

例えば、チームで練習をするとなると、20km30kmなどを皆でマラソンペースとしてだらだら走ることは、レースではそんなに役に立たない。

それよりも、長い時間自分の体を動かすトレーニングが出来ていれば、あとはレースで練習すればいいと言うのが川内流のマラソンの練習方法です。マラソンのレースを想定した練習方法などがありますが、マラソンというのは不慮の出来事が多く発生するため、練習でレース感覚を身につけるなんてできっこないと言うのが川内理論というわけです。

なので川内選手は年間のマラソンレース出場が年に10回以上というスタイルをとっている珍しい選手です。

実際にマラソンレースを練習の場にして身についたこと

マラソンのレース中、何が起こるかわかりません。

例えば、レース中は前に行った選手が見えなくなるし、後ろの選手も状況がわからないことが多いです。

また、同じマラソンのタイムでも、いろいろなレースパターンが存在します。

マラソンのタイムが2時間8分だとすると、レース展開が2パターン別れる場合があるのです。例えば、トップの選手が前半を上げて後半のペースが落ちつき、ゴールまでいくパターン(Aパターンとする)があります。

そして、もう一つが前半ゆっくりとペースが進んだけど、後半ペースを上げてゴールまでいくパターン(Bパターンとする)があります。

選手によってはBパターンのレース展開でしか勝負できないく、Aパターンのレース展開になるとレース全体を通して、タイムが落ちてしまう人がいるのです。

じゃあ、レース展開として最初から最後までイーブンペースでいけばいいじゃないかと思うかもしれませんが、そういうわけにもいきません。選手はレース中に不安に陥るときがあるからです。

例えば、イーブンペースでいこうとしても、周りの選手が前半にスピードを上げていくパターン(上のAパターン)のレース展開が発生した場合、イーブンペースでレースを進めていくと、前半で周りの選手との差がみるみるうちに離れていく流れが想定できます。

この場合、心理的に「前の選手達とあんなに引き離されていいものなのか」という不安に苛まれるのです。結果的にその不安に負けてしまいスピードを上げた結果、自分のレースができずにタイムもうまく目標に達しないというオチになりやすいのです。

川内選手は実際のレースを多くこなし、様々なレースを経験することで戦略的にマラソンの勝ちパターンを学んでいたわけです。

陸上競技はいかに疲れる練習をするかではなく、いかに早く回復できるか

多くの選手は走り込みをたくさんしますね。川内選手は今まで説明したとおり、疲れる練習はしません。ここに川内選手の強さが隠されています。

大学から陸上競技を始めた武井壮さんはあるラジオ番組でこのように語っていました。

「僕は大学から陸上を始めたんですけど、陸上選手の練習を見て、おかしいなと思ったんですよ。冬になるとゆっくり長い距離を走る練習をしだすんですよ。」

例えば、冬場では100mの選手がゆっくり長く走る練習を取り入れたりします。300mや400mなどの距離を走るのです。

そして春になるとスピード練習に切り替えるというのが一般的な練習の流れです。よくよく考えるとおかしいですよね。すると、武井壮さんはこのような言いました。

「だって速く走るスポーツですよ?なのに、一旦スピードを落としてもったいないと思わないんですか?って聞いたんですよ。」

「そしたら、寒い時にスピードだしたら怪我しちゃうじゃん?」

この言葉を受けて武井壮さんは「いやそれは違う!」と感じたと言います。

速く走らなきゃいけない選手が、速く走らない練習をたくさんする場合があるのはとってもおかしいと。

そこで武井壮さんはどうしたかというと「冬のシーズンは試合がなく、試合に対して調整することがないから、冬場でもずっとスピード上げる練習してた。」

「で、春になってもスピード上げる練習をし続けるから、一年中ずっと右肩上がりで速くなってくんですよ。」

ところが他の選手は冬場にスピードを落とした練習をしてくれるんで、春は僕の方がもう速いんです。」

マラソンの選手でも、スピードを維持することに特化した練習よりも、スピード重視の疲れる練習をたくさんすることがあります。

疲れる練習より、回復することに注目する

どうやったら疲れるかと言う練習をたくさんする。とにかく陸上選手は辛い練習をしていないと不安になる生き物です。この一番の理由はコーチに問題があると武井壮さんはいっています。

それは練習不足で記録が伸びないことをコーチは嫌うのです。多くのコーチはとにかく沢山の辛い練習をやらせる人が多いですよね。

理由はいろんな種類の疲れる練習をやらせ、その練習した中に記録が伸びる効果的な要素が含まれているだろうという考えのコーチが世の中には多くいるからだということです。

これは非常によくない傾向です。なので記録を伸ばすために一番大事なのは、いかに疲れる練習ができるかではなく、いかに疲れた体を回復させ、次の練習に完全な状態で挑めるかなのです。川内選手は誰よりも疲労を恐れ、いつも万全なコンディションで練習することを心がけていたから市民ランナーとして大成できたのでしょう。

つまり今回伝えたかった内容は武井壮さんの言葉を借りると以下にまとめられます。

陸上競技の練習は筋肉を壊すことが目的じゃない。壊していかに速く回復して、成長するか。